
あらわすいとなみ Vol.1 kioku手芸館「たんす」

photo:Hyogo Mugyuda
佐賀大学美術館では、社会における芸術の役割について、より実生活に近い視点から考えることを目的とした展覧会シリーズ「あらわすいとなみ」を開催します。社会の中で継続的なアートプロジェクト(または、アートプロジェクトを自称しないが、表現を介した社会活動)を行っている個人・団体を招聘し、その活動を紹介します。
アートは古くから、社会変化を促すための有効な方法として、社会運動や活動に用いられてきました。日本では、1990年代頃から「アートプロジェクト」という言葉が使われ始め、他者との共同制作やワークショップ、または地域づくりなど、様々な広がりを持つ共創的活動とされ、全国各地で大小さまざまなプロジェクトが展開されています。
本展においては、個人やグループの作品としてではなく、主に特定の地域や対象と継続的に行われている活動に目を向けて紹介し、芸術や表現がもたらす社会的意義について再考する場となることを目指します。
第1回目は、大阪市西成区山王にある元タンス店を活用し、地域のコミュニティ形成を行いながら創造活動を行う「kioku手芸館たんす」を紹介します。不要となった素材を活用し、地域の女性たちの手仕事によるプロダクトの制作を行ったり、アーティストらと共同して商品開発を行うなど、モノづくりやアートを媒介としたユニークな活動を続けています。展示では、「kioku手芸館たんす」の活動として、美術家の西尾美也と地域の女性たちとの共同制作で立ち上げたファッションブランド「NISHINARI YOSHIO」の取り組みを中心に紹介します。
開催概要
会期 | 2024年11月29日(金)~2025年2月2日(日) |
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会場 | 佐賀大学美術館 小展示室・歴史展示スペース |
開館時間 | 10時~17時(入館は16時30分まで) |
休館日 | 月曜日(祝日の場合、翌火曜日休館)、年末年始(12月28日~1月5日)、2025年1月18日(土)、19日(日) |
観覧料 | 無料 |
主催 | 佐賀大学美術館 |
協力 | 東京藝術大学西尾美也研究室、佐賀大学大学院地域デザイン研究科 キュレーション演習クラス、佐賀大学芸術地域デザイン学部 情報デザイン研究室、佐賀大学農学部地域社会開発学研究室 |
企画 | 五十嵐純(佐賀大学美術館 学芸員) |
あらわすいとなみ Vl.1 kioku手芸館 たんす 小冊子
2025年1月7日発行
企画・発行:佐賀大学美術館
編集・執筆:五十嵐純、松尾真由子・高岩みのり(一般社団法人brk collective)、三浦麻衣、西尾美也
写真:麥生田兵吾、草本利枝
写真提供:Breaker Project
デザイン:後藤大樹(Foot Print)
印刷・製本:大同印刷株式会社
関連イベント
トーク:あらわすいとなみとたんすについて
講師 | 西尾美也(アーティスト、東京芸術大学准教授)、松尾真由子・高岩みのり(一般社団法人brk collective)、花田伸一(佐賀大学) |
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日時 | 2024年12月14日(土)14時~15時半 |
会場 | 佐賀大学美術館 |
参加費 | 無料、先着20名 |
申し込み | 11月12日(火)より事前申込制(TEL:0952-28-8333) |
出張「たんす」:ものづくり工房
講師 | 松本香壽子、新谷若江、須藤よし子(kioku手芸館 たんす のコアメンバー)※15日のみ |
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日時 | 12月14日(土) 16時から17時、12月15日(日)13時~17時 ※入退場自由 |
会場 | 佐賀大学美術館 歴史展示スペース |
参加費 | 無料、事前申し込み不要 当日会場にお越しください。 |
不要になった生地や糸をつかって、普段「たんす」で行われている作業を体験いただけます。
担当学芸員による展覧会解説
日時 | 2024年12月7日(土)13時~/2025年1月12日(日)13時~ |
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参加費 | 不要 当日会場にお越しください。 |
同時開催中の「SUAM/ROOT Vol.2 黒木由美 -♮-」展と合わせて行います。
アーティスト

kioku手芸館「たんす」
西成区山王にある元タンス店を活用した創造活動拠点。大阪市の文化事業として「ブレーカープロジェクト」の一環で2012年に開館。アーティストと地域住民が出会い、相互に影響を与え合いながら、共にものづくりに取り組む場として、地域のなかに定着してきた。2018年より、一般社団法人 brk collectiveが運営を行っている。地域住民を中心とした参加者が集まり「つくる」ことを軸とした様々な活動を行うほか、地域の女性たちの手仕事によるオリジナルプロダクトや美術家・西尾美也との共同制作によるファッションブランド「NISHINARI YOSHIO」の工房兼ショップとして週2日オープンしている。


一般社団法人 brk collective
brk collective [ブレコ] は、大阪市の芸術文化振興事業の一環として2003年より始動した「ブレーカープロジェクト」の企画・運営を担ってきた事務局メンバーによって、これまでの経験と蓄積をさらに様々な地域で展開していこうと2015年7月に設立。
芸術文化が人々の創造性をはぐくみ、多様な価値が共存する社会の再構築に不可欠であるという認識のもと、新しい表現活動を支える環境整備のほか、教育・福祉・まちづくり等、領域を超えた連携・協働のプラットフォーム形成に向けた事業や調査に取り組む。

NISHINARI YOSHIO
kioku手芸館「たんす」 に集まる地域の女性たちとの共同制作により2018年に立ち上げた西成発のファッションブランド。地域の女性たちによる予想を裏切るアレンジや発想の飛躍、西尾が考えるイメージとの齟齬など、予期せぬズレをコンセプトの一つに、作業着=日常を生きるための服を提案している。NISHINARI YOSHIOの商品は、「身近な人を想定し、その人への思いやりをデザインする」や「自分の人生を表す最後に着たい3着をデザインする」といった西尾からメンバーに出されるお題から生まれたもの。「たんす」に集まる不要になった生地を活用し、1点ごとに布違いで制作していることも特徴のひとつである。2023年より地域に急速に増えつつあるベトナム人コミュニティと服づくりのワークショップを実施している。
