展覧会情報

2024.09.08 (Sun)

【予告 主催展】佐賀大学美術館企画展 SUAM/ROOT Vol.2 黒木由美 -♮-

日程:2024年11月26日(火)~2025年03月09日(日)

 

 佐賀大学美術館では、地域の芸術文化交流地点として、様々な人が地域ゆかりの文化・芸術に触れることを目的に、九州を拠点に活動をする若手・中堅アーティストを個展形式で紹介する企画展「SUAM/ROOT」を開催します。ROOTは、「根」や「本質」のほかに「応援する」という意味を持ち、本展では国籍や出身、表現手法を問わず、地域に根差して活動を続け、今後の活躍が期待されるアーティストを紹介していきます。

 

 第2回目となる本展では、2019年に佐賀大学大学院地域デザイン研究科修士課程を修了し、現在は宮城県を拠点に活動を続ける黒木由美を紹介します。黒木は、「生きるだけのいきもの」をテーマとし、窯の中の焼成を生かした釉薬による造形表現を追求しています。本来やきものにおいて釉薬は主に装飾として用いられますが、黒木は釉薬そのもので造形を行っています。作品の支持体には針金を用いて、発泡する釉薬で造形し、吊下げて焼成を行うことで独自の有機的な形を生み出しています。本展のタイトルとなった「♮(ナチュラル)」は、音符記号で「元の音に戻す」意味を示します。黒木の制作の土台は本学在学中の釉薬の研究にあり、作品制作は自身が戻ってくる場所のように感じるといいます。

 

 変化が激しく、ときに迅速な判断や明確な態度が求められる現代の私たちの生活においては、あいまいさとも言い換えられる偶然性や不確定性を持つ事柄は敬遠されがちです。一方で、現代はこれまでになく先の見通せない時代にあるともいわれています。陶芸はその制作のプロセスにおいて予測不可能なことが多く起こりますが、黒木の素材研究と繰り返し行われる実験によって生み出された作品からは、単なる偶然性では言い表せない表現を見ることができます。創造性と偶然性が生み出す豊かな表現は、私たちの日常に潜んでいる「意識を向けていない可能性」にも気づきをあたえてくれるのではないでしょうか。

 

図3《#19》2022年 釉薬、針金、磁土 W350xH380xD280mm 作家蔵

 

 

【開催概要】

会期:2024年11月26日(火)~2025年3月9日(日)

会場:佐賀大学美術館 特別展示室

開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)

休館日:月曜日(祝日の場合、翌火曜日休館)、年末年始(12月28日~1月5日)、2025年1月18日(土)、19日(日)、2月22日(土)~25日(火)

観覧料:無料

主催:佐賀大学美術館

助成:公益財団法人 金子財団

企画:五十嵐純(佐賀大学美術館 学芸員)

 

【関連イベント】

「アーティストトーク」

講師:黒木由美

日時:2024年11月30日(土)13:00~
会場:佐賀大学美術館 特別展示室

対象:どなたでも

参加:無料
申し込み:不要 当日会場にお越しください。

 

「担当学芸員による作品解説」

日時: 2024年12月7(土)13時~/2025年1月12日(日)13時~

同時開催中の「あらわすいとなみ Vol.1 kioku手芸館「たんす」」展と合わせて作品解説を行います。

対象:どなたでも

参加費:無料

申し込み:不要 当日会場にお越しください。

 

 

【アーティスト】

黒木由美 KUROKI Yumi

1991年、福岡市生まれ。陶芸作家。「生きるだけのいきもの」をテーマとし、窯の中の焼成を生かした釉薬による造形表現を追求している。釉薬と土の両方の特性をもつ古代オリエントのファイアンスの研究により、針金と釉薬を用いた独自の制作技法で作品制作を行っている。美しさや醜さ、増殖や消滅などの相反する意味をもつ泡の質感に惹かれ、泡のように膨らむ釉薬素材と技法、自身の感情が相互に作用し、形や色となって導き出され、焼成の結果、生きもののような有機的な造形を生み出している。主な個展に「黒木由美#1」(2022年、福岡)、主なグループ展に「紀南アートウィーク2024 いごくたまる、またいごく」(2024年、和歌山県)など。その他に瀬戸国際セラミック&ガラスアート交流プログラム レジデンス参加(2022年、愛知)など。

 

左 《#12》2022年 釉薬、針金 W200xH130xD120mm 作家蔵

右 《#18》2022年 釉薬、針金、磁土 W180xH200xD150mm 作家蔵